認知症予防には、規則正しい生活・バランスのよい食事・適度な運動…が大切なことは言うまでもありませんが、それに加え以前のコラムでもお伝えした“ながら脳トレ”(https://sanoh-corp.jp/post-1019/)などで、体と脳を同時に刺激することが重要です。

「脳への刺激」と聞くと、ついつい脳トレなど特別な取り組みを思い出してしまいますが、それだけではありません。「早めの白内障治療が認知症予防に!?」(https://sanoh-corp.jp/post-1151/)で触れたように、人間の情報の9割は視覚から得ています。確かに割合は視覚が一番大きいと考えられますが、それ以外にも聴覚や味覚、触覚など、あらゆるものが脳への刺激につながります。

そして加齢とともに多くの方は聴覚に支障が出てきます。いわゆる「耳が遠い」状態。志村けんさんの“ひとみばあさん”は「あんだって!? あたしゃ耳が遠いもんでねぇ」とよく言っていたのを思い出します。

“ひとみばあさん”は愉快な仲間たちと大騒ぎしていたので、きっと毎日が楽しく刺激にあふれていたに違いありません。しかし多くの場合、音が届いていないということは「鳥のさえずり」や「車の音」など日常の音すらも聞こえず、脳への刺激も少なくなっています。独居であれば孤独を感じることもあるでしょう。

 

さらにそれだけではなく、聴覚が衰えるということは、外出時も車や自転車などとの走行音が聞こえず接触事故に遭ったり、転倒する危険性が高まったりします。さらに病院に行っても、医師の声が聞こえないために理解できず、処方された薬の飲み方がわからないかもしれません。電話が鳴って出ると「母さん、オレだよオレ!」。なんだかいつもと違う息子の声だけれど耳が遠くなったからかも…と勘違いし、取り返しのつかないことになってしまう可能性もあります。

そこでおすすめするのが「補聴器」です。器具を装着するだけなので怖かったり痛かったりすることもなく、誰でも気軽にチャレンジができます。周囲の音がクリアに聞こえることは、脳への大きな刺激になります。

米国では66歳以上の男女11万人を対象にした大規模研究では、補聴器の使用と、3年以内に起こった認知症やうつ病、転倒事故などの関連性を調べました。補聴器の使用者は男性約13%、女性約11%。補聴器を使っている人は、使っていない人に比べて認知症リスクはなんと18%ほど低下したそう。さらに不安症やうつ病は11%、転倒は13%、それぞれリスクが低かったとのことです。

難聴自体は認知症と同じ加齢現象の一つであり、聞こえているから認知症にならないわけではありませんので、「絶対に補聴器をすべき」とは言えません。しかし、孤独感や刺激のなさが、脳の機能低下につながることは間違いなさそうです。

日本ではメガネ屋さんで補聴器が売っているケースが多いですよね。しかし「お父さん、耳が遠くなったんじゃない?」と言われて慌てて買いに行くのはNGです。まずは耳鼻科に行き、きちんとした診断を受けることが重要です。もしかしたら何らかの疾患で手術が必要なケースかもしれません。かつて耳鼻咽喉科医師に聞いたところによると、耳垢が詰まっていて聞こえないだけのケースもよくあるそうです…。良心的なクリニックだと補聴器のお試しレンタルができるところもあります。

 

きちんと聞こえれば家族や友人との会話も、テレビや映画もより一層楽しめます。聞こえづらいと思ったら、まずは耳鼻科を受診して、認知症予防にもなる補聴器装着の相談をしてみましょう。