汗や紫外線の影響などもあり、夏に悪化する人も多いアトピー性皮膚炎。かいた汗そのものが刺激となり痒みが強くなるだけでなく、ひっかき傷などのところから細菌も繁殖しやすいといいます。また強い紫外線が皮膚のバリア機能を破壊して、炎症と痒みを引き起こします。

 

アトピー性皮膚炎への対応には、生活習慣の改善や食事療法、塗り薬も含めたスキンケア、そして内服薬があります。これらを上手に組み合わせて対処していくわけですが、強い痒みにより集中力が下がったり熟睡できなかったりと、QOLも著しく低下してしまいます。

そんなアトピー性皮膚炎に苦しむ方々へ向けて開発された新薬「ネモリズマブ」をご存じでしょうか。「ネモリズマブ」は中外製薬が手掛けたもの。京都大大学院医学研究科の椛島健治教授らのグループと、国内で同薬の皮膚分野の開発・販売権を持つマルホ株式会社が実施した臨床試験で、「ネモリズマブ」の重度患者の痒みの改善と安全性を確認。先月9日、アメリカの医学誌『The New England Journal of Medicine』に掲載されたと発表されました。

「ネモリズマブ」は、中外製薬株式会社が創製した抗IL-31レセプターAヒト化モノクローナル抗体。IL-31は「そう痒誘発性サイトカイン」で、アトピー性皮膚炎などの患者のそう痒の発生に関与していることが報告されています。また、IL-31はアトピー性皮膚炎の炎症を引き起こし、皮膚バリア機能を破綻させることも示唆されていますが、新薬はIL-31とそのレセプターの結合を阻害して、痒みの発生を阻止する仕組みなのだそうです。

今回掲載された臨床試験は、13歳以上、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者合計215人が対象。ネモリズマブ群143人とプラセボ群72人に分けて4週間ごとに皮下投与、16週間後の有効性と安全性を調査したものです。抗炎症外用薬も併用しながら行われたこの試験では、ネモリズマブ群の42.8%に痒みの改善が見られたほか、半数以上が睡眠の質などを評価するISIスコアも改善したと報告されました。一方で大きな副作用は確認できなかったとしています。

 

痒みそのもののつらさももちろんですが、集中力の低下や睡眠障害も非常に苦しい症状の一つであるアトピー性皮膚炎。特に睡眠は私たちの生活すべてを見回して考えても一、二を争うほど大切な生活習慣ではないでしょうか。アトピー性皮膚炎の改善にも大きくアトピー性皮膚炎患者のQOL向上につながる「ネモリズマブ」の実用化への期待が高まります。