先週のコラムでは、映画「あまくない砂糖の話」についてお伝えしました。この映画を観るべく「amazon prime video」にアクセスしたときに、もう一つ気になっていた映画を思い出しました。それが今回のタイトルでもある「フード・インク」です。

 

「フード・インク」は2008年にアメリカで制作されたフード・ドキュメンタリー映画。これまで私たち現代人が何の疑問も持たず、考えたこともなかったような食品産業の問題点に切り込んだもの。映画の制作国であるアメリカが舞台ですが、これは大量生産時代のどの国にも、ある程度共通した問題が潜んでいると思います。

50年前と比べ、ヒナは半分の期間で、当時より2倍の大きさの成鶏に成長します。人気のあるムネが肥大化した鶏は、急激な成長に追い付かず、骨や関節が弱いために歩くこともできません。牛などの家畜は牧草など本来の食事を取り上げられ、農薬などテクノロジーを駆使して大量生産が可能になったトウモロコシをエサとしています。なんと魚までも。

 

映画の中で特に恐ろしいエピソードがありました。例えば牛は牧草を食べる体になっていて、トウモロコシを食べるような体の造りにはなっていないのです。胃の中には無数のバクテリアがいて牧草を消化するようにできているそうですが、コーンを食べさせ続けると大腸菌が耐酸性を持つようになるとのこと。そして、大腸菌が凶悪に進化し大腸菌O-157が生まれたといいます。

狭い中に押し込められた牛たちは、自らの糞尿にまみれて生活します。1頭がかかれば次々と感染しますし、食肉処理場へ運ばれるときには、トラックの中でイモ洗い状態。工場に到着するころには全身にべっとりと糞尿が付着しているそうです。そこから加工となれば…お察しのとおり。大腸菌に汚染された肉を加工したハンバーガーを食べて命を落とした子どもの事例も。二度と起こしてはならないと戦う母親のインタビューもあります。

このほかにも遺伝子組み換え作物の問題では、安全性はもとより、大企業が握る食べ物の「知的財産権」についても取り上げられています。現実的に「公共の作物」がなくなり、弱い立場の農家は特許権を侵害したなどとして訴えられています。大企業相手では戦う労力も費用もケタ違い。ほとんどの人たちは和解・示談を選んで、信念を捨てざる得ない状況でした。

 

これらの情報は2008年までの取材で映像化されたものですから、現在は社会システムや人の考えも大きく変化しているでしょう。しかし、映画冒頭の問題提起「食品がどこからきたかを考えもせず、ハンバーガーを食べてきた」というコメントは、12年経ったいまも、多くの人たちに共通することではないでしょうか。

体によい食品を食べるにはお金がかかります。だからこそ映画では「政策レベルの変革が必要だ。チップスよりニンジンが儲かるように」と締めくくられています。さすがにこの映画を観た後に、食事をする気が起きません…。そのぶん、今日からしっかりと食材について考え、行動を改めていきたいと考えなおすこともできました。またこの映画は食品ではなく製品を作る「工場フードシステム」だけではなく、あくまでも自然に家畜を育て、青空のもと食肉加工している農家などのインタビューもあります。“健康”を考えるとき、食事は切っても切り離せません。私たちの体を作る「食品」を知る一つのきっかけになる映画「フード・インク」をぜひ観てみてください。