最近、「においがわからない」と一番に疑ってしまうのが新型コロナウイルス感染症。新型コロナ特有の初期症状として嗅覚障害や味覚障害が取り上げられてから、意識して食事を取っている方もいるのではないでしょうか。嗅覚と味覚の各障害はそれぞれの神経障害という面もありますが、嗅覚が効かないことにより食品のかおりや味がわからないということも。嗅覚と味覚は密接な関係があります。余談ですが、朝晩とコーラを飲んで嗅覚・味覚の変化を確認しているという知人がいます。しかしコロナよりも別の病気へのリスクが高くなりそうなので、おすすめはできません…。

 

さて、嗅覚障害はウイルス性のものだけではありません。実は認知症のごく初期症状としてもあらわれるもの。認知症にはアミロイドβの蓄積、神経原線維の変化などのほか、伝達物質の一種であるアセチルコリン神経細胞の脱落などが関わってきます。嗅覚と大きく関係するのがこのアセチルコリン神経細胞で、アルツハイマー病になるとこの神経細胞が減少していってしまうそうです。

母の作ったご飯やお菓子のにおい、地元の料理屋さんの前を通ったときの独特のかおり、好きだったあの人がつけていた香水……記憶とも密接に関わる嗅覚。アロマの香りを嗅いでリラックスするなど、人の感情的な部分にも大きく作用します。また、食べて良いものと悪いもの嗅ぎ分けることができない、火事やガス漏れなど危険を察知する能力が下がるなど、命に関わる大切な感覚でもあります。

高齢者の中には鍋を焦がしてしまったり、味付けが大きく変わってしまったりということもよくあるケースだそう。認知症ならば鍋に火をかけたことを忘れたと考えられがちですが、焦げたにおいに気がつかないというケースも多いそうです。これは認知症そのもののモノ忘れよりも、その初期症状の嗅覚障害の可能が考えられます。

嗅覚を失うと、先ほども挙げたとおり命の危険もあるほか、食事が美味しく感じられないことから低栄養へとつながっていく可能性も。脳への刺激も不足するので、認知症もどんどん進行してしまうかもしれません。

以前に耳鼻科医師に嗅覚障害の治療法について話を聞いたことがありますが、嗅覚トレーニングとして「これはバニラだ」と唱えながらバニラエッセンスを、例えばレモンのアロマオイルなら「これはレモンだ」とつぶやきながら、それぞれ一生懸命クンクンと嗅ぐのだそうです。記憶とにおいをつなげるトレーニングを行うことで、嗅覚を取り戻していく取り組みだそうです。

 

嗅覚に異常がなければこうしたトレーニングは不要ですが、いつも気にしていない「におい」を意識することは、“脳トレ”のひとつ。いつもなら気にせずゴクゴクと飲んでしまうお茶の香りを楽しみ、その味を意識しながらのどを潤す。食事をするときも食材と調味料を考えながら味わう。散歩中にお花を見つけたら遠くからクンクンして、お花の香りを感じてみる。こうして過ごすことで脳が活性化しますし、日々の生活もきっと豊かになるはずです。ぜひお試しください。