2020年3月13日、参議院本会議で行われた採決で、新型コロナウイルス対策の特別措置法が賛成多数で可決・成立しました。あれから1年。世界は大きく様変わりしました。当初は自粛による運動不足や鬱などさまざまな心身面の悪影響が叫ばれましたが、すでに若い世代は「新しい生活様式」に順応しつつあるように感じます。

 

しかしネット通販・デリバリーを駆使したり自宅でリモートワークを行ったり、あるいは直接会うのが難しい今、家族や友人とバーチャル交流するといった新しい生活になじめる人ばかりではありません。特に認知症の方は、こうした環境変化に対応することは難しく、これまで通りの介護サービスを受けられなくなってしまうことも。さらに介護施設などは利用・面会制限などさまざまな感染予防対策が原因で、精神への悪影響や身体機能の低下が懸念されました。

 

そしてその影響は家族にも及ぶはず。そこで広島大学では、2020年2月から6月にかけ、施設入所中や在宅療養中の認知症患者へのアンケートを実施。サービス利用状況や認知症患者の家族の変化などについて、入所系医療・介護施設945施設および介護支援専門員751名にオンライン調査しました。

 

入所型高齢者施設では、32.5%が運営状況に大きな変化があったといいます。そしてほぼ全施設で、入所者の日常的な活動が制限されたとのこと。高齢者は重症化リスクが高いため、命を守るためには当然の措置です。しかし少しの不自由もすぐにリカバリーできる若者とは異なり、高齢者の場合は人との交流や運動が減少すると、その悪影響は後々にまで響いていくところが怖いところです。さらに通所や訪問などの各サービスの71.5%に変化があり、なんと78.7%の認知症患者が少なくとも一部のサービスが「受けられなくなった」「受けなくなった」といいます。

 

そして医療・介護施設の38.5%、介護支援専門員の38.1%は「認知症者に影響が生じた」と回答していて、「特に行動心理症状の出現・悪化、認知機能の低下、身体活動量の低下等の影響がみられた」と回答しているのです。

 

そして介護サービスが受けられなくなると、家族がカバーしなければなりません。介護保険サービスが受けられず、家族が介護を行うケースは72.6%、そのために家族が仕事を休んだり、介護負担のため精神的・身体的な負担が増したりしたそうです。「家族なのだから当然だ」と思われがちですが、介護する人にとって心身への負担は計り知れません。もし介護離職ともなれば経済的にも追い込まれてしまいます。

 

現在、高齢の家族がいない、まだ認知症の気配はないと安心してはいられません。内閣府「平成29年度版高齢社会白書」では、2020年の時点で65歳以上の6人に1人が認知症患者であると推定しており、600万人を超える人が認知症であると考えられています。さらに誰もが罹患する可能性があるのが認知症。決して他人事ではありません。このような異常事態の中で、どのような支援が認知症患者にとって最もよいのかはこれから議論を重ねていくとともに、医療・介護サービスの提供、生活習慣の改善などにより認知症にならない・進行させない取り組みを行っていくことが重要です。

 

https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/147388/20200730_pr01.pdf