先週の「糖尿病と認知症」はお読みいただけましたか? 今回のテーマも引き続き糖尿病合併症について。今回は「糖尿病と歯周病」の関係をお伝えしたいと思います。

 

生活習慣病の代表格は?と問えば、「糖尿病」と答える方が多いでしょう。その糖尿病の合併症の一つであり、密接な相互関係を持つのが「歯周病」です。

 

まず歯周病は、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に繁殖する細菌により慢性的な炎症が引き起こされる病気です。歯茎の炎症のみで収まっているうちは歯肉炎と呼ばれ、進行すると歯周炎(歯槽膿漏)となります。その発生や進行具合は、遺伝や環境要因に加え、免疫力なども関与してくるそうです。

 

糖尿病となると血管障害や代謝異常をはじめ、さまざまな問題が体に現れますが、それが歯周病の発症や進行に大きく関わります。それはなぜか。体の抵抗力が下がっているので細菌にかかりやすくなり、炎症により歯周組織が破壊されやすくなっているからです。

 

そしてその影響は、歯周病・歯周炎そのものにとどまりません。その細菌から毒素が歯肉から血管へと入りこみ、腫瘍壊死因子αの産生を促進。その結果、血糖値を下げるインスリンをも作りにくくしてしまうのです。これをインスリン抵抗性と言います。歯周炎があることでインスリンの働きが悪くなり高血糖状態になるものですから、糖尿病のコントロールが効かなくなってしまい、さらに歯周炎が進行するという負のスパイラルに陥ってしまうということです。

 

さらに人間の体は優秀で、このインスリン抵抗性を少しでも改善しようと働き出しますが、これが大変危険な状態。より多くのインスリン産生を試みる「高インスリン血症」が長く続くと、産生細胞である膵β細胞が疲労困憊し、末期の糖尿病となってしまうそうです。とても恐ろしいですね。

 

以上のことから分かるのは、歯周病は糖尿病合併症の一つであること、そして歯周病自体が糖尿病をさらに悪化させること、です。そのため糖尿病の予防や治療において、歯周病・歯周炎の適切な予防・治療が必要になってくるのです。

現在の研究では、歯周病治療によって糖尿病のコントロール状態をあらわず糖化ヘモグロビン(HbA1C)の改善が見られることが明らかになっています。先ほどの糖尿病悪化の経路とは逆で、歯周病を治療することで腫瘍壊死因子αが低下し、インスリン抵抗性が改善して血糖コントロールが可能になるという仕組みです。

 

このように糖尿病と歯周病は、切っても切れない双方向の関係性があるのです。歯周ポケットで増殖した細菌が血液を通じて全身を回るということは、糖尿病はもちろんのこと、そのほかの疾患にも深く関わってくるのは間違いありません。日本臨床歯周病学会ではホームページのQ&Aにて、歯周病は自然治癒のない疾患であること、「『歯周病は万病のもと』とも言える」と解説しています。食生活や運動など気を遣っているという方も、歯の健康への取り組みを再度チェックしてみてくださいね。

 

最近は「メンテナンス」に力を入れる歯科クリニックも急増し、治療チェアよりも歯のお掃除だけを行うチェアのほうが多いところもあるほど。「歯や歯茎が痛い」「口内に違和感が…」という理由がなくても受診しやすい環境が整っています。これまでお口の健康をおろそかにしてきた方は、まず「かかりつけ歯科医」を探すことから始めてみましょう。