さて、今回は動物のアトピーについてです。残念ながら、日頃かわいがっているペットがアトピー性皮膚炎になってしまうことがあります。例えば、世界中のイヌの何パーセントぐらいがアトピーなのかを調べた統計がいろいろとあるのですが、少ない見積りだと3%、多い見積りだと30%という数字が報告されています。(1)(2)

前回までのブログでも述べてきましたが、人間のアトピーについてもその仕組みがよく分かっていない状況ですので、いわんや動物をや、というのが現実です。分かっている範囲でその仕組みをおさらいしてみましょう。

アトピーの発症については、IgE抗体の生成に関わる遺伝子に原因があるらしい、ということが言われています。しかし遺伝がすべてではなく、外的要因と相まって発症に至ります。つまり、アトピーになりやすい遺伝子を持っていても必ず発症するわけではない、ということです。

ではアトピーを誘発する外的要因について考えてみましょう。まず第一に、皮膚のバリア機能の低下があります。これは体質による場合が多いようです。皮膚のバリア機能が低下すると、表皮細胞の免疫システムが外部のアレルゲン物質と接触する機会が多くなります。そしてこれによってIgE抗体が産生されます。

このIgE抗体は、真皮(表皮より深いところにあります)にある肥満細胞と結びつくことによって、サイトカイン、ヒスタミン、ケモカインなどの物質を出します。するとここに好中球や好酸球が集まってきます。さらにT細胞や樹状細胞が加わることによって、好酸球がたんぱく質を放出し(「顆粒放出」と呼ばれます)、このたんぱく質が皮膚を傷つけることによって、かゆみや赤みが起こるといわれているのです。

さて動物の場合、空気中に漂うアレルゲン物質をカットすることができないので、アトピー治療には「アレルゲン特異免疫療法(allergen-specific immunotherapy)」が使われることが多いようです。ネコの場合、治癒率が50%であまり効果的ではないようですが、効果があるといわれるイヌの場合でも、その作用機序についてはよく分かっていません。

アレルゲン特異免疫療法は、アレルゲン物質を少量ずつ皮下注射することで、免疫システムを「慣れさせる」ことが主眼です。少しずつ免疫システムを慣れさせていくことで、アレルゲン物質に対して激しく反応しないようにしてあげるのです。ただし、繰り返しますが、確かなことはまだ解明されていません。IgE産生や肥満細胞との反応が抑制されると考えられています。

この治療法を実施するためには、具体的にどんなアレルゲン物質に反応しているのかを正確に知る必要があり、方法としては大きく2種類あることが知られています。一つは、実際に皮膚にアレルゲン物質を注射して、生理食塩水を注射した時の反応と比較する、というものです。人間でも同様のテストが行われることがありますが、動物の場合でも、80~90%の確率でアレルゲン物質を特定できるようです。もう一つの方法は、血液検査によるものですが、時間がかかるうえに、精度も上記の方法に比べて10~15%低下するといわれています。さらにネコの場合には、血液検査でアレルゲン物質を特定するのは難しいようです。

 

 

(1)IVDS, Saint-Petersburg, 2012

(2)Veterinary Dermatology, No.1, 2010