本年残すところわずかとなりました。本日が仕事納めの方も多いのではないでしょうか。皆様には格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます。

猛暑の8月半ばからスタートした当コラムですが、いよいよ年内最後となりました。今回のテーマは「シロスタゾールとタキシフォリンの関係」。どちらも認知症への対応素材であり、両素材の併用療法がアルツハイマー病と密接な関連が明らかとなっている脳アミロイド血管症の新規治療薬として期待されているのです。

脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy:CAA)は、脳内の血管壁に生じるアミロイドーシスで、アルツハイマー病発症の原因の一つであるアミロイドβが蓄積するアミロイドβ型CAAをはじめとしたさまざまなタイプがあります。CAAは、健常高齢者で30~40%で認められますが、アルツハイマー病患者はなんと80~90%で見られるもので、アルツハイマー病とCAAは密接な関連が指摘されているのです。

タキシフォリンの研究でも知られる齊藤聡氏の研究報告によると、CAAに起因する循環障害がアミロイドβ産生亢進につながっていると考えられ、またCAAによる脳出血や脳梗塞はアルツハイマー病を悪化させると報告されています。ですから当然のことながら、CAAの治療はアルツハイマー病対策に有効だとのこと。

それでは「シロスタゾールとタキシフォリン」に話を戻します。まずシロスタゾールとはどのようなものでしょうか。タキシフォリンはこれまでのコラムでも説明してきましたが、シロスタゾールは「初めて聞いた」という方も多いと思います。

シロスタゾールは、慢性動脈閉塞症の治療、ラクナ梗塞(直径1.5cm以下の小さな梗塞)などの脳梗塞後の再発を防ぐために用いられる抗血小板薬。タキシフォリンは食品素材ですが、シロスタゾールは医薬品で『プレタール(Pletal)』(大塚製薬)の名で販売されています。

先述の齊藤氏の研究では、このシロスタゾールによって「アミロイドβクリアランスが亢進し、血管拡張予備能が改善」「脳内のアミロイドβ沈着量も減少し、認知機能障害も改善」が報告されているのです。

この齊藤氏もメンバーだった国立循環器病研究センターの研究チームは、京都大学や先端医療振興財団臨床研究情報センター等との共同研究で、タキシフォリンがアミロイドβの脳血管への蓄積を抑制することを突き止めています。脳アミロイド血管症モデルマウスにタキシフォリンを投与したところ、アミロイドβが蓄積してできるアミロイドβオリゴマー量が大幅に減少し、脳血流量や認知機能も正常に近い状態まで回復することを明らかにしたのです。その研究成果は英国の専門誌「Acta Neuropathologica Communications」に掲載されました。

 

ともに認知症の予防・進行抑制・改善に有効なシロスタゾールとタキシフォリンには、相乗効果があるとする研究もあります。齊藤氏は「併用療法の可能性を考え,現在準備を進めている」といい、今後の研究に期待が寄せられています。今年も認知症関連のさまざまな悲しいニュースもありましたが、認知症の研究がさらに進み、いつかは完治できる病気となるかもしれませんね。

年始は1月6日より、コラム掲載を再開させていただく予定です。来年も皆様にとって良い年になるようお祈り申し上げます。どうぞよいお年をお迎えください。

[参考・引用]

脳アミロイド血管症の新規治療薬の開発(齊藤 聡)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cbfm/30/1/30_23/_pdf/-char/ja