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タキシフォリンの機能性

タキシフォリンの構造・性質

タキシフォリン(図2)は、フラボノイドの基本骨格(図1)の構造を有するポリフェノールの一種で、別名「ジヒドロケルセチン」とも呼ばれ、フラバノノール類に属し、抗酸化や抗糖化作用にえ、血管保護や血流改善等の機能性、アミロイドβの蓄積の減少などの報告があります。
タキシフォリンの化学構造は玉ねぎなどに多く含まれるフラボノイドであるケルセチン(図3)と極めて類似しています。

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ケルセチンはC- 複素環におけるC-2およびC-3原子の結合が二重結合であるのに対し、タキシフォリンは単結合となり水素が2個付加されているだけの違いですが、立体構造としては、まったく異なるものなです。
それは一か所の結合の違いにより、タキシフォリンにはケルセチンにはない4つの構造異性体が存在するようになるためであり、この立体構造の違いにより、タキシフォリンはケルセチンよりも強力な抗酸化活性を発揮し、薬理学的な機能も異なってくるのです。
(駒井 三千夫, タキシフォリンの血管・血流改善作用 ( 特集 血管・血流を若々しく保つ), Food style21,24(12),34-36,2020)

期待される機能性

1. 抗酸化作用

抗酸化作用とは、活性酸素による酸化ストレスを消去する作用のことを言います。活性酸素とは、「ほかの物質を酸化させる力が非常に強い酸素」のことで、殺菌力が強く、体内の細菌やウイルスを撃退します。その一方で、活性酸素が過剰になると、正常な細胞や遺伝子をも攻撃(酸化)します。とくに強力な活性酸素であるヒドロキシラジカルは、ガンや動脈硬化などの様々な病気のトリガー要因として、研究が盛んに行われています。
タキシフォリンは、これまで発見された天然物質の中でも強力な抗酸化作用があります。抗酸化作用により活性酸素による細胞の障害を防ぎ、生活習慣病の予防や改善に役立つ可能性があることから、近年注目されています。
活性酸素消去機能を数値化した指標の1つであるORAC(※)において、タキシフォリンは、抗酸化ビタミンとして知られるビタミンCよりはるかに高い抗酸化力を持っていることが分かっています。

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2. 抗糖化作用

抗糖化作用とは、糖質とたんぱく質が結びついた糖化物質の生成を抑える作用のことを言います。糖化は、食事などから摂った余分な糖質が体内のタンパク質などと結びつく現象で、細胞などを劣化させます。
糖化によってつくられるAGEs(※)は血管、臓器、肌などのタンパク質に作用し、動脈硬化や白内障、認知症などの多くの病気に関係していることが知られています。

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AGEs は、体内で生成されるだけでなく、食品にも含まれます。身近にAGEs を多く含む食品として、揚げ物や焼き物など高温で調理された食べ物が挙げられます。しかし、糖化した食品を食べ過ぎると私たちの身体で不都合なことが起こります。血管の組織が糖化により固くもろくなると、血管壁の炎症、動脈硬化に繋がります。美容面では、コラーゲン繊維が破壊され弾力を失ったり、シミやシワの原因となります。
タキシフォリンには、抗糖化作用があるため、糖化によるタンパク質の変性を防ぎ、健康や美容に大きく貢献できる素材として期待されています。

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※ AGEs:Advanced Glycation End Products

3. 血管保護

血管は年を取れば、少しずつ傷み、自然と弾力性が失われていきます。また血管の内壁に悪玉コレステロール(LDL コレステロール)がこびりつき、コブ状のプラークが形成されます。そのため、加齢とともに、血液がスムーズに流れにくくなり、血管内皮細胞が傷害され、動脈硬化が起きていきます。
タキシフォリンは、抗酸化作用により、血液成分の脂質やコレステロールの酸化を防ぎ、こうした脂質が血管にこびりつくのを防ぎますので、血管内皮機能の低下を防ぐことが期待できます。

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4. 血流改善

全身の血管の長さは、繋げると約10 万㎞に及び、地球2周半にあたります。毛細血管は血管の99%を占めており、100 億本あると言われています。動脈と静脈の間に位置し、細胞に必要な酸素や栄養を送り、不要となった二酸化炭素や老廃物を回収するのが毛細血管の役割です。

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タキシフォリンの研究

国内外で研究が数多くされているポリフェノールの一種で医学・生物学系の学術データベース「MEDLINE」によると、750論文以上が掲載されています。

タキシフォリンは、抗酸化1)2)、抗糖化3)、抗炎症4)、血流改善5)、血管保護6)7)8)などの作用があることが数多くの研究でわかっており、糖尿病などのる生活習慣病の予防や改善に役立つ可能性が示されています。 また、近年、認知症に関する研究9)10)11)が国内外で行わており、マウスの実験でアルツハイマー病の原因となる異常なタンパク質(アミロイドβ )の脳内蓄積を抑え、認知機能を回復させる物質であることが示唆されています12)

タキシフォリンの原産地であるロシア(旧ソ連)において数多くの研究が行われて同国内で発表されていますが、これらの研究や試験に関する情報はロシア語のみで存在しているものがほとんどで、英語に翻訳されていません。
タキシフォリンに関する研究(英文のみ)はロビオス社のホームページの「HUMAN HEALTH)」に掲載されています。
https://russiantaxifolin.com/en/food-industry/
※ページ内の「Taxifolin and Human Health (Studies in English)」から研究論文の内容が確認できます。

タキシフォリンに関する研究

  1. Xican Li, Hong Xie.Li X , et al .The mechanism of (+) taxifolin’s protective antioxidant effect for •OH-treated bone marrow-derived mesenchymal stem cells. Cell Mol Biol Lett. 2017 Dec 27;22:31. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29299033/
  2. Y O Teselkin , I V Babenkova, et al . Dihydroquercetin as a means of antioxidative defense in rats with tetrachloromethane hepatitis.Phytother Res. 2000 May;14(3):160–2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10815007/
  3. Daisuke Muramatsu, Hirofumi Uchiyama, et al . Cell cytotoxity and anti-glycation activity of taxifolin-rich extract from Japanese larch, Larix kaempferi. Heliyon, 2019 Jul;5(7) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S240584401935707X#!
  4. Melanie Ricke-Hoch, Elisabeth Stelling, et al .Impaired immune response mediated by prostaglandin E2 promotes severe COVID-19 disease. PLOS ONE. 2021 Aug;16(8). https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0255335
  5. M B Plotnikov, O I Aliev, et al . Dihydroquercetin Improves Microvascularization and Microcirculation in the Brain Cortex of SHR Rats during the Development of Arterial Hypertension. Bull Exp Biol Med , 2017 May;163(1):57-60. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28577102/
  6. Yuri A Kim, Antonina F Korystova, et al. Flavonoids decrease the radiation-induced increase in the activity of the angiotensin-converting enzyme in rat aorta. Eur J Pharmacol , 2018 Oct;837:33–37. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30148999/
  7. Tamara V Arutyunyan , Antonina F Korystova, et al. Effects of taxifolin on the activity of angiotensin-converting enzyme and reactive oxygen and nitrogen species in the aorta of aging rats and rats treated with the nitric oxide synthase inhibitor and dexamethasone. Age (Dordr). 2013 Dec;35(6):2089–97. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23271616/
  8. Xiangyu Cao , Ruochen Bi, et al. A study on the protective effects of taxifolin on human umbilical vein endothelial cells and THP-1 cells damaged by hexavalent chromium: a probable mechanism for preventing cardiovascular disease induced by heavy metals. Food Funct. 2020 May;11(5):3851–3859. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32319486/
  9. Takayuki Inoue , Satoshi Saito, et al. Pleiotropic neuroprotective effects of taxifolin in cerebral amyloid angiopathy. PNAS. 2019 May;116(20):10031–10038. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31036637/
  10. Masashi Tanaka , Satoshi Saito, et al. Potential Therapeutic Approaches for Cerebral Amyloid Angiopathy and Alzheimer’s Disease. Int J Mol Sci. 2000 Mar;21(6):1992. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32183348/
  11. Satoshi Saito, Yumi Yamamoto, et al. Taxifolin inhibits amyloid-β oligomer formation and fully restores vascular integrity and memory in cerebral amyloid angiopathy. Acta Neuropathol Commun. 2017 Apr;5(1):26. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28376923/#affiliation-1
  12. 齊藤 聡, 脳アミロイド血管症の新規治療薬の開発. 脳循環代謝.2018;30(1): 23-28. https://www.jstage.jst.go.jp/article/cbfm/30/1/30_23/_article/-char/ja/