タキシフォリンの構造・性質

タキシフォリン(図2)は、フラバノノール(フラボノイドの基本骨格の構造を有するポリフェノール:図1)の一つで、ジヒドロケルセチンともよばれています。
その機能性は、抗酸化、抗糖化、抗炎症、抗菌、抗血管新生などがあることがわかっており、薬理学的特性についても血糖上昇抑制、遺伝毒性、ガン、アルツハイマー病、乾癬、高尿酸血症、肺疾患、糖尿病、心疾患、動脈硬化症などの疾病に対する阻害作用など、数多くの報告がなされています。

タキシフォリンと化学構造が似ているケルセチン(図3)との比較では、C- 複素環におけるC-2およびC-3原子の結合が単結合という違いによってタキシフォリンにはケルセチンにはない4つの構造異性体が存在することを示しており、ケルセチンに比べて高い抗酸化力、抗糖化力がある(下記グラフ参照)など、薬理学的な機能も異なっています。
さらに、タキシフォリンは、ケルセチンと比べ、変異原性がなく毒性も低いことが報告されています※)
※( Patrudu S, et al. Environmental and Molecular Mutagenesis 50 (6): 451-9.20,2009)

期待される機能性

1. 抗酸化作用
抗酸化作用とは、活性酸素による酸化ストレスを消去する作用のことを言います。活性酸素とは、「ほかの物質を酸化させる力が非常に強い酸素」のことで、殺菌力が強く、体内の細菌やウイルスを撃退します。その一方で、活性酸素が過剰になると、正常な細胞や遺伝子をも攻撃(酸化)します。とくに強力な活性酸素であるヒドロキシラジカルは、ガンや動脈硬化などの様々な病気のトリガー要因として、研究が盛んに行われています。
タキシフォリンは、これまで発見された天然物質の中でも強力な抗酸化作用があります。抗酸化作用により活性酸素による細胞の障害を防ぎ、生活習慣病の予防や改善に役立つ可能性があることから、近年注目されています。
活性酸素消去機能を数値化した指標の1つであるORAC(※)において、タキシフォリンは、抗酸化ビタミンとして知られるビタミンCよりはるかに高い抗酸化力を持っていることが分かっています。

2. 抗糖化作用
タキシフォリンは、抗糖化作用があり、タンパク質が糖化された物質によるカラダへの作用を抑制します。
抗糖化作用とは、糖質とタンパク質が結びついた糖化物質の生成を抑える作用のことを言います。糖化は、食事などから摂った余分な糖質が体内のタンパク質などと結びつく現象で、細胞などを劣化させます。糖化によってつくられるAGEs(※)は血管、臓器、肌などのタンパク質に作用し、動脈硬化や白内障、認知症などの多くの病気に関係していることが知られています。

AGEsは、体内で生成されるだけでなく、食品にも含まれます。身近にAGEsを多く含む食品として、揚げ物や焼き物など高温で調理された食べ物が挙げられます。
しかし、糖化した食品を食べ過ぎると私たちの身体で不都合なことが起こります。血管の組織が糖化により硬くもろくなると、血管壁の炎症、毛細血管の劣化、そして動脈硬化につながります。美容面では、コラーゲン繊維が破壊され弾力を失ったり、シミやシワの原因となります。
タキシフォリンは、抗糖化作用があるため、糖化によるタンパク質の変性を防ぎ、健康や美容に大きく貢献できる素材として期待されています。
右下の「ポリフェノールの抗糖化活性」の図はタキシフォリンを含めたポリフェノールの抗糖化作用を示しているもので、IC50μMは糖化の指標であるAGEsの生成を50%阻害する濃度のことで、数値が低いほど抗糖化作用があるということになります。
※AGEs:Advanced Glycation End Products

3. 血管保護作用
タキシフォリンは、血管を保護して、毛細血管の劣化や動脈硬化を予防・改善します。
血管は年を取れば、少しずつ傷み、自然と弾力性が失われていきます。また血管の内側に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)がこびりつき、コブ状のプラークが形成されます。そのため、加齢とともに赤血球などの血液成分がスムーズに流れにくくなり、動脈硬化が起きていきます。
タキシフォリンは、抗酸化作用により、血液成分の脂質やコレステロールの酸化を防ぎ、こうした脂質が血管にこびりつくのを防ぎます。このようにタキシフォリンは、血管内壁の酸化を防ぐことで、動脈硬化を予防・改善し、血管を守ります。

4. 血流改善作用
タキシフォリンは、毛細血管の劣化を防いで血流を保ち、酸素や栄養成分を全身の組織に届けます。
全身の血管の長さは、繋げると約10万㎞におよび、地球2周半にあたります。
毛細血管は血管の99%を占めており、動脈と静脈の間に位置し、細胞に必要な酸素や栄養素を送り、不要となった二酸化炭素や老廃物を回収する役割を果たしています。毛細血管は加齢とともに劣化し血流の流れが悪くなることで、血管のゴースト化が発生します。このゴースト血管が増えると、細胞の修復が遅くなり、組織や臓器の機能が低下により様々な病気の発生リスクが高まります。
タキシフォリンは、抗酸化・抗糖化作用により毛細血管や血液成分の劣化を防ぎ、血流をスムーズにします。このようにタキシフォリンは、毛細血管内腔の狭窄を防いで、酸素や栄養成分が体の隅々まで届くようにしています。