タキシフォリンは天然のポリフェノール

タキシフォリンはジヒドロクェルセチン(Dihydroquercetin)とも呼ばれており、ポリフェノールの一種です。
ポリフェノールは、植物が光合成を行うときに生成する物質で、植物の樹皮、表皮、種子などに含まれる色素や苦味、渋味といった植物特有の成分です。
代表的なものとして、大豆に含まれるイソフラボン、玉ねぎのケルセチン、お茶のカテキン、赤ワインのタンニン、ブルーベリーのアントシアニン、蕎麦のルチン、チョコレートのカカオポリフェノール、ウコンのクルクミン、ごまのセサミンがあり、それらを総称するものです。

ポリフェノールは、ファイトケミカルの中で最も有名な成分です。ファイトケミカルとは、食物由来の化学成分であり、具体的には、果物や樹木が紫外線や害虫など、有害なものから身を守るために作り出した色素や香り、味、粘液などの成分を指します。
これは、動物のように自らが動くことができない植物にとって、紫外線や虫などの外敵や自然の厳しい環境によるストレスから身を守る防御物質であると考えられています。例えば、苦味成分のタンニンの例として、柿が未熟な段階では不快な渋みを呈し、種子が発芽能力を持つと動物に食べさせて種子を運ばせるために渋味がなくなるのは有名な話です。
また、お茶の葉に日光が当たると、うま味成分であるテアニン(緑茶アミノ酸)がカテキンに変化します。これも茶葉が紫外線から身を守るためにポリフェノールのカテキンを生成し、結果として渋いお茶が作られます。

ポリフェノールは、強い抗酸化作用を持っており、様々な病気の原因である活性酸素を抑制する働きをします。抗酸化成分の代表的なものには、ビタミンCやビタミンE、そしてポリフェノールが有名です。普段の食事から野菜やフルーツ、大豆製品など、抗酸化作用のある食事を心がけ、サプリメントなどで補うことが大切です。

タキシフォリンは、私たちの身近なものでは、あずき、ネギやリンゴ、柑橘類、ダークベリー、ブドウなどの野菜やフルーツ、ワタやモロコシの実、さらには落花生やオリーブオイルなどに含まれています。そのほかにも、昔からハーブや薬用植物で用いられているオオアザミ(マリアアザミ)の成分のひとつとしても知られています。

タキシフォリンは、ブドウの種子やバラの花びらからの抽出が試みられましたが、タキシフォリンが最初に抽出されたのは、アメリカンオーク(アカガシワ ブナ科 の落葉高木:原産地北米)であることがわかっています。 タキシフォリンはカラマツなど針葉樹に多く含まれ、草本植物や低木の成分の中でも数多く発見されていますが、極地に近い激寒の地域に生育している樹木ほど良質なものが抽出できるそうです。これは、カラマツが寒暖差や風雪から身を守る、防御機能が働くからだと考えられています。

タキシフォリンはどのようして作られているの?

タキシフォリンはカラマツの樹皮の内側の木部の形成層から抽出されます。

カラマツはとても硬い木材であるため、加工は難しいとされています。また、乾燥させるとねじれが出てしまう性質で、ヒノキや杉のようにオイルが抽出できないので、用途が少ない樹種と言われています。タキシフォリンの抽出に使われるシベリアカラマツは厳寒の地で生息するため、カラマツの伐採は雪解けの時期である5月から始まり、樹齢150年以上のものが対象となります。タキシフォリンはカラマツ樹皮の内側にある木部形成層で作られますが、形成層は木の生きている部分で、木の皮を剥いだときにヌルヌルしている部分が特徴で、細胞の成長の変化が年輪に現れます。
伐採した木材は皮を剥いで、細かくまきにしたものをさらに粉砕したおがくずにされ、そこから水と有機溶媒を使って抽出されます。生成のプロセスにおいては、一度に純度の高いものを抽出するのには高い技術力が必要であるため、回数を分けて段階的に抽出して純度をあげているケースもあるようです。エタノール等の安全性の高い溶媒を使って単回で高純度のものを抽出している原料は高品質であると言えます。

同じ松の仲間で、フランス海岸松やニュージーランド松などのアカマツの松樹皮由来のポリフェノールとしてプロシアニジンが知られていますが、強い紫外線や潮風から自身の身を守るための厚い樹皮(日本のアカマツの2倍程度)から抽出されます。

タキシフォリンは何に使われているの?

タキシフォリンは海外では食品、化粧品、医薬品、など幅広く使われています。

タキシフォリンはサプリメント等の健康食品として使われる場合が多いですが、優れた抗酸化、抗糖化、抗炎症作用により、海外では食品(菓子、オートミール、ヨーグルト、豆のスープ、ソーセージ、等)、飲料水、化粧品、飼料、などの生活雑貨など、幅広い分野で使用されています。
また、タキシフォリンは神経筋系のスピードとパワーを高めたり、有酸素および無酸素性作業能力の向上を促進したり、アスリートの情緒安定性を高めるなどの有用性が報告されており、ドーピング成分が含まれていないことからスポーツ医学分野で推奨されているようです。
珍しいところでは、歯磨き粉に配合しスクラブ(研磨)材として、歯石を取るなど、口腔内の消毒や歯茎の出血の抑制、殺菌作用で歯茎の低下を抑えるという目的でも使われています。