(vivo) クロザピン誘発性心筋障害に対する保護効果(2023.Sep)

【研究の背景および目的】
クロザピンは治療抵抗性統合失調症に効果的な薬物ですが、心筋障害を引き起こすリスクがあります。この心筋障害は、炎症反応が深く関与していると考えられています。本研究では、植物由来のフラボノイドであるタキシフォリンが、クロザピンの心毒性に対して保護効果を示すか否かを、ラットを用いて検討しました。

【研究の方法】
実験動物であるラットを、以下の3つの群に分けました。
対照群: クロザピンもタキシフォリンも投与しない群
クロザピン群: クロザピンのみを投与する群
タキシフォリン+クロザピン群: クロザピン投与前にタキシフォリンを投与する群
一定期間の投与後、心筋組織の損傷マーカー(トロポニンI、CK-MBなど)や酸化ストレスマーカー(MDA)、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β)のレベルを測定し、組織学的に心筋の病変を観察しました。

【結果】
クロザピン投与群では、対照群と比較して、心筋組織の損傷マーカーや酸化ストレスマーカー、炎症性サイトカインのレベルが有意に上昇し、組織学的に心筋の変性が認められました。一方、タキシフォリンを併用した群では、これらの指標の上昇が抑制され、心筋の病変も軽減されていました。これらの結果は、タキシフォリンがクロザピンによる心筋障害を抑制する可能性を示唆しています。

【結論および応用可能性】
本研究の結果から、タキシフォリンはクロザピンによる心筋障害に対して保護効果を示すことが示唆されました。タキシフォリンは、抗酸化作用や抗炎症作用を介して、クロザピンによる心筋組織の損傷を抑制すると考えられます。これらの結果は、クロザピンによる心筋障害の新たな治療標的として、タキシフォリンが有望であることを示唆しています。
本研究は、タキシフォリンの心保護効果を示す重要な知見を提供しましたが、さらなる研究が必要です。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0003448723002317