(vivo)心臓損傷に対する効果(2024.Nov)
【研究の目的】
クロザピンは、治療抵抗性統合失調症に用いられる非定型抗精神病薬ですが、心臓に対する副作用があり、重篤な場合は死亡に至ることもあります。この心毒性には炎症反応が関与していると考えられており、抗炎症・抗酸化作用を持つ物質によってその予防が可能かもしれません。
本研究では、抗酸化・抗炎症作用を持つタキシフォリンがクロザピンによって引き起こされる心筋障害に対してどのような効果を持つかを、生化学的および組織学的に評価することを目的としました。
【結果】
ラットを①健康対照群(HC)②クロザピン投与群(CLN)③タキシフォリン + クロザピン投与群(TCL)の3群に分けて、タキシフォリンは50 mg/kgを経口投与、クロザピンは20 mg/kgを28日間、毎日経口投与を行い、投与後、血液および心臓組織を採取し、血中マーカー:トロポニンI、CK-MB(心筋障害マーカー)、組織マーカー:MDA(酸化ストレス指標)、tGSH(抗酸化物質)、TNF-α、NF-κB、IL-1β(炎症性サイトカイン)を測定しました。また、心臓組織の組織学的解析も行いました。
その結果、クロザピン群(CLN)では、トロポニンI、CK-MB、MDA、TNF-α、NF-κB、IL-1βが有意に上昇し、tGSHが低下。また、心筋の変性、筋線維の不規則性、うっ血スコアも有意に増加。タキシフォリン併用群(TCL)では、これらの異常が有意に軽減され、特に組織構造の保護効果が認められました。
TCL群では、トロポニンI、tGSH、NF-κBは健康群と同等、他の指標(CK-MB、MDA、TNF-α、IL-1β)はCLN群より有意に低値でした。
【結論及び可能性】
タキシフォリンは、クロザピンによる心筋障害を酸化ストレスと炎症の抑制を通じて軽減する可能性があることが示されました。この結果から、タキシフォリンはクロザピン誘発性心筋障害の予防・治療に有用である可能性が示唆されます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0003448723002317