(vivo)酸化ストレスの抑制を通じた精巣形成異常の予防(2022.Dec)

【研究の背景と目的】
精巣形成異常症候群(Testicular Dysgenesis Syndrome:TDS)は、男児の停留精巣(陰嚢に精巣が降りない)や尿道下裂(尿道が正常な位置に開かない)などの異常として現れます。
このTDSは、胎児期のフタル酸エステル(特にDEHP:ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート)曝露によって引き起こされることが知られています。
しかし、なぜフタル酸エステルがこのような異常を引き起こすのかという詳細なメカニズムや、治療や予防に有効な方法については、まだ十分に解明されていません。
この研究では、DEHP曝露によるTDS発症の**メカニズム(とくに酸化ストレスとSIRT1/PGC1α経路)を明らかにすること、そして、天然化合物「タキシフォリン(Taxifolin)」がそれを防ぐ効果を持つかどうかを検証することが目的です。

【結果】
妊娠中のラットにDEHPを投与し、胎児のオス仔ラットにTDS様の異常を誘発し、一部の群にはタキシフォリン(10 mg/kgまたは20 mg/kg/日)を併用投与を行い、出生後のオス仔ラットの精巣について以下の項目を評価しました。

  • ライディッヒ細胞(男性ホルモンを産生)の分布・形態
  • 多核性ゴノサイト(異常な精原細胞)の形成
  • 酸化ストレスマーカー(MDA:マロンジアルデヒド)や抗酸化因子(SIRT1、PGC1α)など

その結果、DEHP曝露群では、①胎児ライディッヒ細胞の異常な集積②多核性ゴノサイトの増加③酸化ストレス(MDAの増加)④SIRT1/PGC1αのレベル低下が観察されました。
一方、タキシフォリンを併用した群では、これらの異常が有意に抑制されました。
タキシフォリン単独では、これらの項目に影響は見られませんでした。

【結論】
胎内DEHP曝露は、酸化ストレスとSIRT1/PGC1α経路の破綻を通じて、精巣形成異常を引き起こしますが、タキシフォリンはこれらの変化を抑え、TDSの発症を予防する効果があることがわかりました。
これらのことから、タキシフォリンはフタル酸誘発性TDSの予防に有望な植物性治療薬であると示唆されました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0041008X22004070?dgcid=raven_sd_recommender_email