(vitro/vivo) メラノーマ(悪性黒色腫)に対する抗腫瘍効果(2024.Jan)
【研究の背景】
メラノーマ(悪性黒色腫)は、紫外線をはじめとする要因により発生し、死亡率の高い皮膚がんの一種です。従来の治療法に加え、近年では標的療法や免疫療法が導入されましたが、すべての患者に有効とは限りません。そのため、より効果的な新たな治療法の開発が求められています。
【研究の目的】
タキシフォリンは、植物に含まれるフラボノイドの一種で、強力な抗酸化作用や抗炎症作用を持つことが知られています。これまでの研究で、タキシフォリンには抗腫瘍作用があることが示唆されていましたが、そのメカニズム、特にメラノーマ(悪性黒色腫)に対する効果については不明な点が多く残されていました。そこで、タキシフォリンのメラノーマに対する抗腫瘍効果をin vitroおよびin vivoの両方でその基礎となるメカニズムを解明することにしました。
【結果】
タキシフォリン(> 99 %)は、200 および 400 μM で B16F10 メラノーマ細胞の増殖と移動を阻害し、100 および 200 μM で A375 細胞の増殖と移動を阻害しました。
モデルマウスを用いた実験60 mg/kgでは、顕著な毒性を引き起こすことなく腫瘍の成長と転移を抑制し、生存期間を延長させることが示されました。
これらのことから、タキシフォリンが、メラノーマ細胞におけるUSP18というタンパク質を阻害することで、細胞の増殖や転移に関わる複数のシグナル伝達経路(Rac1/JNK/β-カテニンなど)を抑制し、抗腫瘍効果を示すことが明らかになりました。
※タキシフォリンの作用機序:
タキシフォリンは、USP18というタンパク質の働き(細胞内のタンパク質を分解から守る)を阻害します。USP18が阻害されると、Rac1、JNK、β-カテニンなどのタンパク質が分解されやすくなり、これらタンパク質が関わる細胞の増殖や転移に関わるシグナル伝達が抑制されます。このシグナル伝達の抑制により、メラノーマ細胞の増殖が抑制され、細胞死が誘導されます。また、転移に関わる細胞の移動能力も低下します。
【結論および応用可能性】
これらの結果は、タキシフォリンがメラノーマに対する新たな治療薬となる可能性を秘めています。既存の治療法に抵抗性を示すメラノーマに対して、タキシフォリンが有効である可能性も考えられます。今後、さらなる研究を通じて、タキシフォリンの臨床応用が期待されます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0944711323005585