(vivo/silico)タキシフォリンの認知機能低下抑制作用(2025-Mar)
【研究の背景】
アルツハイマー病(AD)をはじめとする認知症は、コリン作動性神経の障害、酸化ストレスの亢進、神経炎症の持続などが複合的に関与する神経変性疾患です。特に、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性の亢進や活性酸素種(ROS)の増加は、記憶・学習障害の重要な要因とされています。スコポラミン誘発性認知症モデルは、これらの病態を再現する前臨床モデルとして広く用いられています。タキシフォリンは抗酸化・抗炎症作用を有する天然フラボノイドであり、神経保護作用の可能性が示唆されてきましたが、包括的な行動学的・生化学的検証は十分ではありませんでした。
【研究の目的】
本研究は、雄 Sprague-Dawley ラットにおけるスコポラミン誘発性認知症モデルを用いて、タキシフォリンの認知機能改善効果および神経保護作用を多角的に評価し、その作用機序を行動学的評価、生化学的解析、組織学的解析および in silico 解析により明らかにすることを目的としました。
【方法】
雄 Sprague-Dawley ラットを4群に分け、タキシフォリン(5 mg/kg, i.p.)または標準薬ドネペジルを5日間投与し、最終日にスコポラミン(2 mg/kg)を投与しました。Y迷路試験、モリス水迷路試験、ポールクライミング試験により記憶・学習能を評価しました。試験後、脳組織を用いて AChE 活性、酸化ストレス指標(MDA、NO)、抗酸化酵素(SOD、カタラーゼ、還元型グルタチオン)、炎症指標(MPO)を測定し、さらに脳組織の病理組織学的解析を行ないました。加えて、AChE に対する分子ドッキング解析および ADMET 解析により薬理学的特性を評価しました。
【結果】
- スコポラミン投与により低下した記憶・学習能力(Y迷路、モリス水迷路、ポールクライミング試験)をタキシフォリンが有意に改善
- AChE 活性の亢進を抑制し、コリン作動性機能障害を改善
- 脳内の脂質過酸化(MDA)および NO レベルを低下させ、酸化ストレスを抑制
- MPO 活性を低下させ、神経炎症を抑制
- 低下していた抗酸化酵素(カタラーゼ、還元型グルタチオン)を回復
- 病理組織学的解析において、神経細胞変性、ミクログリア活性化、血管うっ血が軽減
- 分子ドッキング解析により、タキシフォリンは AChE に対して安定した結合(ドッキングスコア 55)を示す
- ADMET 解析から、良好な薬物動態特性と低毒性プロファイルが示唆された
【結論】
本研究は、タキシフォリンがスコポラミン誘発性認知症ラットモデルにおいて、認知機能低下を抑制し、神経保護作用を示すことを包括的に明らかにしました。これらの効果は、AChE 活性抑制、酸化ストレスおよび神経炎症の低減、抗酸化防御機構の回復といった複数の作用機序を介していると考えられます。
以上の結果から、タキシフォリンは認知症、特にアルツハイマー病関連病態に対する有望な天然由来候補成分である可能性が示唆されます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1567576924010385

