認知症予防とタキシフォリン
新聞やニュースなどで「認知症予防」に関連する情報を見かけない日がないほど国民の関心ごとのひとつになりました。医学的には、「予防」は発症を防ぐ一次予防から、早期発見、早期対応を目指す二次予防、診断後(発症後)の進行を食い止める三次予防まであり、国が政策的に進めているのは早期発見して早期対応しようという「二次予防」をいいます。
私たちができることは、発症するのをできるだけ遅らせる「一次予防」になります。ただ、「認知症予防」という言葉が強調されると、認知症は「なってはいけない病」ととらえられ、認知症への不安につながることが懸念されます。ですから、私たちは加齢とともに身体の様々な機能が低下していくので、認知症の有無にかかわらず個々人の暮らし(生活スタイル)を大切にしていくことこそが認知症予防のひとつと言えるのではないでしょうか。
認知症予防のエビデンスとしては、世界的に有名なFINGER(フィンガー)研究が紹介されることが多いですが、2年間の観察で認知機能障害の進行を抑制したというものです。この研究では野菜と魚を中心とした地中海式食事を多く摂り、恒常的に筋力トレーニングと有酸素運動に取り組み、認知機能の課題や生活スタイルの指導を組み合わせることが効果的であるとされています。これらのことから、我が国の官民協働の取り組み(J-MINT 研究:国立長寿医療研究センターを中心とした認知症予防の多因子介入試験)でも運動・栄養・社会参加・脳トレの組み合わせが推奨されています。
アルツハイマー病の原因物質である「アミロイドβたんぱく」というのを聞いたことがあると思いますが、これは加齢とともに脳にたまるシミや糸くずのようなもので、これらが細胞を死滅させていくと考えられています。しかしながら、認知症および加齢による認知機能低下に関する知見では、基本的なメカニズムには長期にわたる酸化による脳細胞の傷害や慢性炎症などによる血管系の障害により、脳機能のネットワークの障害が起こって認知症に至るという考え方が有力となっています。※
※ Snyder HM, et al. Alzheimer Dement, 11,710-717,2015
関連するタキシフォリンのはたらき
タキシフォリンはマウスを使った実験で脳血流を改善し、脳内のアミロイドβオリゴマー( 固まり) の産生を抑制し、アミロイドβたんぱくの血管内への排出が亢進した1)との報告があります。また、それらの働きから、記憶力や視空間認知機能の改善に関する報告があります。2)
1) 井上貴之ら:Proc Natl Acad SciUSA ; 116(20),10031-10038.2019
2)Yuanyuan Wang,Metab Brain Dis.33(4):1069-1079,2018
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