(vivo)肥満および肝臓がんの抑制(2023.Jan)

【研究の背景】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、代謝ストレスと炎症性刺激が複雑に絡み合って発症する病気です。NASHの治療において重要なのは、治療がNASHから肝細胞がんへの進行を防げるかどうかを確認することです。

【研究の目的】
この研究では、NASHモデルのマウスを使い、タキシフォリンによる治療が脂肪肝や慢性的な炎症、肝線維症の発症をどれだけ防ぐかを調べました。タキシフォリンの効果は、肝細胞に直接働きかけることで脂肪の蓄積を抑えるメカニズムが関わっています。

【結果】
タキシフォリンは、褐色脂肪細胞に直接作用するだけでなく、肝臓でFGF21(糖脂質代謝を改善するなどの抗肥満作用をもつ因子)を増やすことで間接的にも作用し、褐色脂肪組織の活性を高めました。その結果、体重増加が抑えられました。また、NASHが進行した後でも、タキシフォリンを使った治療により、肝腫瘍の発症を効果的に防ぐことができました。これにより、タキシフォリンがNASHに対して幅広い治療効果を持つことが示されています。

【結論および可能性】
この研究は、タキシフォリンが新しい作用機序を持つことを示し、NASHが進行した後でもタキシフォリン治療が肝腫瘍の発症を防げる可能性があることを明らかにしました。

※NASH連続体(Nonalcoholic Steatohepatitis continuum)
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を中心とする肝疾患の進行(単純性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変、肝がん)を示す一連の段階を表す概念:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9865844/