(in vitro/in vivo)シスプラチン誘発急性腎障害に対する保護作用(2025-Oct)
【研究の背景】
シスプラチンはさまざまながんの治療に用いられる抗がん剤ですが、副作用として腎毒性を示し、急性腎障害(AKI)を引き起こすことが臨床上の課題となっています。近年、シスプラチンによる腎尿細管障害には、脂肪酸酸化の低下やATP産生障害など、細胞のエネルギー代謝異常が関与することが示されています。一方、天然フラボノイドであるタキシフォリンには抗酸化・抗炎症作用などが報告されていますが、シスプラチン誘発腎障害に対する作用とエネルギー代謝との関係については十分に明らかになっていませんでした。
【研究の目的】
本研究は、シスプラチンによって誘発される急性腎障害に対するタキシフォリンの保護作用を検証するとともに、その作用機序、特に脂肪酸酸化および細胞内エネルギー代謝との関係を明らかにすることを目的としました。
【研究の方法】
ヒト腎尿細管上皮細胞およびシスプラチン誘発急性腎障害モデルマウスを用いて、タキシフォリンによる腎保護作用を評価しました。マウスではシスプラチン投与前または投与後にタキシフォリンを経口投与し、腎機能および腎尿細管の組織障害を評価しました。また、RNAシーケンス解析などを用いて脂質代謝関連経路を解析し、脂肪酸酸化、ATP産生、FABP4、PGC-1αおよびPPARαとの関連を検討しました。
【結果】
- シスプラチンによるヒト腎尿細管上皮細胞の障害がタキシフォリンによって軽減された。
- シスプラチン誘発急性腎障害モデルマウスにおいて、タキシフォリンは腎機能低下および腎尿細管の組織障害を軽減した。
- シスプラチン投与2日前からの投与だけでなく、シスプラチン投与2時間後からのタキシフォリン投与でも保護作用が認められた。
- RNAシーケンス解析から、タキシフォリンの腎保護作用にFABP4が関与する脂質代謝経路が関係することが示された。
- タキシフォリンはシスプラチンによって障害された脂肪酸β酸化を回復させた。
- タキシフォリンはPGC-1αおよびPPARαの発現を増加させた。
- 脂質代謝の改善に伴い、低下した細胞内ATP産生が回復した。
【結論】
本研究により、タキシフォリンはシスプラチンによって障害された脂肪酸酸化を改善し、腎尿細管細胞のエネルギー産生を回復させることで、急性腎障害を軽減することが示されました。その作用にはFABP4に関連する脂質代謝経路およびPGC-1α/PPARαの調節が関与すると考えられました。
これらの結果から、タキシフォリンは腎尿細管細胞の脂質・エネルギー代謝を維持することにより、シスプラチンによる腎毒性に対する保護因子となる可能性が示唆されました。

