2016年12月、厚生労働省から先進医療として、水素ガス吸引療法が認められました。実際に水素ガス吸引を用いての治療を行う慶応大学病院では、ホームページにて「水素ガスを酸素とともに吸う、全世界で初めての治療法」と記しています。また水素ガス吸引自体は、大規模施設や機器は必要なく、大病院以外でも取り組める画期的な治療法であると説明されています。

以前のコラムでもお伝えした通り水素ガス吸引療法は、突然の心停止から蘇生したものの脳などの臓器にダメージを負って高度障害が残ってしまう心停止後症候群の患者を対象にしたもの。従来の低体温療法に加え、酸素にプラスした水素ガスを吸引することで、脳が酸素不足によって受けたダメージを軽減するというものでした。水素ガスは爆発の危険性も指摘されてきましたが、その可能性が極めて少ない2%水素を18時間、吸引します。現時点で確立された治療法ではないため、その有効性を調査している段階ですが、水素ガスが体内の有害物質を無毒化し、心停止後症候群から回復し社会復帰を果たす患者が増えることが期待されています。

世界からも注目される水素ガス吸引療法は、この他にもさまざまな臨床研究が行われています。例えば、軽度認知症高齢者を対象にした1ヶ月間の水素吸引を行う産学官連携の試験では、認知機能向上が示唆されました。2025年には700万人を超えると言われる認知症対策としても、非常に期待できる内容ですね。大阪大学呼吸器外科では、肺移植患者を対象とした水素ガス吸引療法の臨床試験を実施。肺移植後に起こる活性酸素が原因とされる「虚血再灌流傷害」は、肺の機能不全や術後の機能廃絶リスクを増加させるもの。水素ガス吸引療法は、この「虚血再灌流傷害」への効果と、それに伴う肺移植成績の改善が期待されています。

これだけではありません。スポーツ分野でも水素ガス吸引は注目を集めており、陸上短距離選手が海外遠征にも水素吸引器を持参することが某スポーツ紙によって記事になっています。このほか水素吸引器メーカーが大学との共同研究で、サッカーユース選手対象の脳機能変化試験を実施。静止視力や動体視力などが軒並みアップする一方、脳ストレスは低下するなど、水素ガス吸引によるパフォーマンス向上が確認されています。

大きな可能性を秘める水素ガス吸引は、徐々にその認知度を高めており、業務用から家庭用までたくさんの機器が発売されています。縮小傾向にあるとされてきた水素商材の中でも、水素ガス吸引器は好調で、各メーカーはエビデンスの構築にも力を入れています。

水素ガス吸引の研究はこの他にも多数行われているとのことで、研究が進むにつれ、より多くの注目を集めることでしょう。今後も多くの可能性を秘めた水素ガス吸引法から目が離せません。