11月27日、水素に関する注目の研究成果が発表されました!
慶應義塾大学医学部から発表されたこの研究報告は、毎日1時間の水素吸入で自律神経のバランスが整い、血圧が下がる効果があるというもの。慶應義塾大学医学部内科学(循環器)教室・佐野元昭准教授、同大学医学部・小林英司特任教授、同医学部救急医学教室・多村知剛助教らの研究グループが、日本獣医生命科学大学獣医保健看護学科の袴田陽二教授らとの共同研究により明らかにしました。この研究成果は、2020年11月26日英国ネイチャー出版グループの『Scientific Reports』電子版に掲載されています。
さまざまなストレスが原因で交感神経が活性化すると、血圧が上昇し脈拍が速くなります。それが短時間であれば問題ないのですが、長く続くことで動脈硬化が進行してしまい、臓器へ悪影響を与えてしまいます。高血圧は、国内で年間33万人が死亡するとされる脳卒中・循環器病の危険因子。超高齢社会の進行と医療費抑制の観点からも、高血圧対策が必要となってきます。
これまで経口摂取や吸入により投与された水素の体内動態の解析は難しかったものの、同研究グループは水素を吸入した際の、吸収や分布、代謝、排泄などの過程を詳細に評価するブタを用いた新しい実験系を開発したそう。これにより吸入された水素は血流によって全身に運ばれることがわかり、なかでも脳への水素移行量は非常に多いことが示唆されたといいます。
先行研究では脳の酸化ストレスや炎症が交感神経の過度な活性化を生じさせることが明らかとなっており、抗酸化・抗炎症作用のある水素を効率よく脳に届けることで、血圧が下がるのではないかと仮定。高血圧モデルラットに毎日1時間、水素吸入をさせて観察しました。すると4週間後、水素含有混合ガスを吸わせたラットは、水素非含有ガスを吸入したラットと比べて、高血圧が有意に改善。安静時だけでなく、活動時の血圧も低下していることが判明しました。
同研究グループは、中国での新型コロナウイルス感染症治療に水素ガス吸入療法が活用された事例も挙げながら、血圧降下作用のほか水素ガスの別効果についても研究を進めていくとしています。
日本人の3人に1人が高血圧と言われる昨今。がんなどの治療にも水素ガス吸入を取り入れ成果を出している医師もおり、今後ますます医療の現場で水素ガス吸入が注目されていくことは間違いなさそうです。