今日はケイ素の話ですが、皆さん、ケイ素とはなにかご存知でしょうか?なにか希少な物質を想像される方もおられるかもしれませんが、実は地球の地殻中の27.6%~29.5%を構成するミネラル成分で、酸素について広く分布する物質です。海水にも、1リットルあたり3ミリグラムのケイ素が含まれているそうです。

普通の社会生活においても、半導体として広く使われており、家電製品などにはなくてはならない物質です。

さらに、人間の体内にも存在しており、健康に重要な役割を果たしています。ミネラルですから、ケイ素が不足すれば、骨や髪、爪や皮膚などに悪影響が出るほか、免疫システムの正常な活動にも支障がでると言われています。医学分野では、骨粗鬆症の予防についての研究が進んでいたりします。

 

例えば、2004年とすこし古いデータにはなりますが、米国での「フラミンガム子孫研究」からの報告[1]があります。フラミンガム研究というのは、1940年代から人々を継続的に調査している、いわいる「コホート研究」の一つですが、今回は「子孫研究」というぐらいですから、最初にこのコホート研究に参加した人たちの子孫たちのお話です。

 

これだけ世代を超えて調査が進んでいるということだけでもすごいのですが、そのなかの報告の一つで、「ケイ素の摂取が骨密度(BMD)に良い影響を与える」ということがありました。報告として発表されたのは2004年のことです。

 

具体的にどんな研究だったかといえば、まず調査対象は30歳から87歳の2847人(男性1251人、女性1596人)で、ケイ素を最も多く摂取しているグループから最も少なく摂取しているグループまで4つに分けたうえで、それぞれのグループの骨密度(Bone Mineral Density)を測定したのです。

その結果、ケイ素を最も多く摂取しているグループのBMDは、最もケイ素の摂取が少ないグループに比べて、10%も多かったのです。この10%はどのくらいのものかというと、例えば骨の健康にいいと言われているカルシウムでは、最もカルシウム摂取が多いグループと少ないグループでのBMDの差が約5%だったということです。つまり、ケイ素はカルシウムよりも、骨の健康に与える影響が大きい、という可能性が出てきたわけです。

 

この「子孫研究」より前にも、マウスなどを使った実験で、ケイ素が骨の発育に与える影響については推測がされていたのですが、それが実際にヒトの対象とした研究で確かめられたと言っていいでしょう。

 

さて、このブログでもコラーゲンなどの話では繰り返し、細胞の結合作用の重要性を強調してきました。実はケイ素はその結合作用にも重要な役割を果たしています。血管のしなやかさ、皮膚の弾力性などを保つためには細胞の結合組織が重要ですが、ケイ素はミネラルとしてそこでも大切な役割を果たしているのです。

地球そのものの成分のなかでも大きな部分を占めるケイ素ですが、その地球に誕生した人類にとって、それが有害な物質であるとは考えにくいですね。

 

[1]”Dietary silicon intake is positively associated with bone mineral density in men and premenopausal women of the Framingham Offspring cohort.”, 2004

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14969400