前回のコラムは「血流障害の怖いお話」。すぐに大きな問題があるわけではないけれど、放置しておけばさまざまな疾患リスクが高まることをお伝えしました。

 

そして糖尿病の合併症である「足病変」も血流障害によるもの。糖尿病が進行すると3大合併症の一つ「動脈硬化」が起こり、これが血流の悪化につながります。また「神経障害」も合併症で、足先の疼痛やしびれなどが発生し、感覚がなくなっていくこともあるとか。

 

いずれも糖尿病により「高血糖」の状態が続くことが原因です。さらに高血糖状態は体の免疫力を下げるため、細菌感染も起こりやすくなってしまいます。そのため例えば靴ずれなど足に傷ができると、そこから細菌感染が広がって悪化し、組織が壊疽して足を切断せざるを得なくなるのです。

演歌歌手の故・村田英雄さんが足を失ったのは糖尿病によるもの。最近だと、モントリオール五輪男子レスリングフリースタイルで8位に入賞し、プロレスラーとしても活躍した谷津嘉章氏が糖尿病の合併症により右足を切断したことを告白しています。

谷津氏は靴ずれがなかなか治らずにいるうちに化膿し、足がどんどん黒くなっていったとか。ようやく病院にかかったところ、時すでに遅く、即日入院し翌日には切断手術を行ったようです。

「足の異変に気づかないことなんてあるの?」と思われがちですが、糖尿病の合併症には糖尿病網膜症などもあり、視力の低下も見られます。谷津氏のケースは分かりませんが、足の神経障害により傷の痛みを感じにくく、また目が悪くなっていることから傷を見つけられず悪化してしまうことも多いそう。また神経障害から運動機能に障害をきたし、足の筋力低下や足底の変形などで足への負担が増加し、傷もつきやすくなるというのも原因の一つのようです。

 

「足病変」を防ぐためには、まずは血糖コントロールが最重要。食事療法と運動療法を基本に、薬物療法で血糖値を良好に保ちます。さらに早期発見が大切ですから、毎日しっかり足を観察し、傷や皮膚の変色など異変がないかも確認を。その際には足を洗い、細菌に感染しないよう清潔に保つことも重要です。そのほか靴下を履いて皮膚を露出させないこと、自分の足に合うサイズの靴を履くなど気をつけることはたくさん。医療機関によっては「フットケア外来」と呼ばれる専門科もありますから、気になることがあればすぐに受診することが大切です。

厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病患者とその予備軍は合わせて2000万人。うち5割ほどが未受診・未診断、または治療中断という報告もあります。糖尿病も血流障害も、それ自体は即座に死につながるものではないかもしれません。しかし放置すれば他の疾患リスクは高まり、足切断や失明といった取り返しのつかない状況にもなり得るのです。

老後資金2000万円を用意できても、ベッドでお金を数えているようではもったいないですよね。いつまでも自分の足で歩けるように、好きなところに遊びに行けるように。今の生活を見直し、自分にできることから始めましょう。