私たちが子どものころは、外で陽の光を浴びることが健康で、部屋にこもって青白いのは不健康だと思われたものですが、最近では紫外線が完全な悪者になってしまったようで、赤ちゃんにも日焼け止めを塗る親がいるようです。確かに一時期オゾン層の破壊が言われたりして、今までになかった有害な物質が宇宙から地表にまで到達していると懸念されたこともあります。最近では、オゾン層は2060年までに回復すると言われているようですが、地球は人類よりも大先輩なのですから、その変化を完全に分析したり予測したりすることは難しいのでしょうね。

 

今日はビタミンDの話ですが、人間の皮膚は紫外線を浴びることでビタミンDを生成しています。通常はこの紫外線による生成だけで、人間に必要なだけのビタミンDは十分足りると言われていますが、食べ物を通じて経口摂取している割合もあります。日焼け止めクリームを塗っていると、紫外線によるビタミンDの生成ができませんから、食べ物や、場合によってはサプリメントで補う必要があります。

ビタミンDはミネラル代謝をコントロールすることで、骨の成長に寄与しています。また神経の保護膜の再生を助ける作用もあります。研究レベルでは、認知機能の低下やアルツハイマー病、高齢によるうつ症状、乾癬などの自律神経系の疾患等、ビタミンDとなんらかの関連があるのではないかとされています。

 

通常、紫外線を浴びていれば不足することはないとさきほど申し上げましたが、日光の波長として、最も効率よくビタミンDが生成できるのは朝日と夕日であるとされています。また皮膚の色素によっても生成効率が変わってくるようで、皮膚の色が黒いほど、ビタミンDの生成量は少ないとされています。大英帝国華やかなりし時代、植民地であったインドから「霧の都」ロンドンにやってきた人々のうち、一部の人はおそらく、ロンドンの短い日照時間による体調不良があったと思われます。

 

さて、ほかには加齢によってもビタミンDの生成効率は低下していきますし、大気汚染によってもその生成効率が下がると言われています。例えば、発展途上国の都市部において子どものくる病が多いのはそのような理由によるかもしれません。

 

日光に浴びる機会が少ない人や、そのような地域に住んでいる人(例えば、北極圏で越冬しようとすれば、ほとんど日光を浴びることはできませんね)、さらには菜食主義者や油の摂取を控えている人も、ビタミンDが不足する場合があるそうです。

 

ある大学病院の先生は小児科で、くる病の子供たちの診察をメインに行っておられますが、母親が偏食である場合が多いとおっしゃっていました。そのような場合には、サプリメントでビタミンDを補うことで症状が改善するとのことです。