抗炎症作用とは
炎症は、体が外部からの刺激(細菌やウイルス、外傷など)に対抗するための防御反応です。 しかし、炎症が過剰に続くと、かえって体にダメージを与えてしまいます。 特に、炎症の過程で「活性酸素種(ROS)」が過剰に生成されると、細胞や組織が傷つき、炎症を悪化させる原因となります。
ポリフェノールは、自らが酸化されることでROSを消去し、酸化ストレスを軽減します。その結果、炎症の初期段階で酸化ストレスが増幅するのを防ぎ、炎症の広がりを抑制する効果があります。
また、炎症を促す物質(炎症性メディエーター)にはTNF-α、IL-1β、IL-6などがあり、これらの産生にはNF-κBという転写因子が関与しています。ポリフェノールの中には、NF-κBの活性を抑えることで、炎症性メディエーターの過剰産生を防ぐものがあります。
さらに、一部のポリフェノールは抗炎症性メディエーターであるIL-10の産生を高め、炎症を鎮める方向に働くことが報告されています。
このように、ポリフェノールは多様なメカニズムで抗炎症作用を発揮すると考えられてます。
炎症と血管の関係
炎症が起こると、血管は次のような重要な役割を果たします。
1.血管拡張
ヒスタミンなどの化学物質によって、血管が拡張し、炎症部位に多くの血液が集まります。その結果、免疫細胞がすばやく現場に到達できます。
2.血管透過性の上昇
血管壁の隙間が広がり、血漿成分や白血球が血管外に漏れ出やすくなります。これにより腫れや痛みといった炎症症状が現れます。
3.血管内皮細胞の損傷
炎症が慢性化すると血管内皮細胞が損傷し、動脈硬化など生活習慣病や慢性疾患のリスクが高まります。
このような欠陥への影響は、心筋梗塞、脳卒中、高血圧、糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、血管炎など、さまざまな病気の発症につながります。
タキシフォリンの抗炎症作用メカニズム
タキシフォリンは、近年の研究から以下のような複数の経路を通じて炎症反応を抑制することが明らかになっています。
【NF-κBの阻害】
炎症を促す重要な転写因子NF-κBの活性を抑制し、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL- 6など)の過剰産生を防ぎます。
【Nrf2の活性化】
抗酸化酵素の産生を促す転写因子Nrf2を活性化し、活性酸素を取り除くことで、細胞損傷を抑制します。
【MAPKシグナル伝達の阻害】
炎症に関わる細胞内シグナルであるMAPK経路の活性化を抑制することで、炎症反応そのものを制御します。
【症性サイトカインの抑制】
上記の経路を総合的に制御することで、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカイン産生を優位に抑制し、炎症反応全体を抑制します。
このように、タキシフォリンは抗酸化作用と抗炎症シグナルの抑制を併せ持ち、多面的に炎症を抑えるバイオアクティブ分子として注目されています。
疾患と抗炎症メカニズム
分類 | 対象 | 論文発表 | 期待される有用性 | 炎症に関わる因子の分子レベルでの作用 | 文献 |
肝疾患 | in vitro | 2020. Oct | 鉄過剰症による肝細胞障害の改善 | 炎症誘発性サイトカインであるTNF-α、IL-6、IL-1βの発現を低下させた | 〇 |
in vivo | 2017. Oct | 急性肝障害の保護効果 | TNF-α と IL-6 がダウンレギュレーションする | 〇 | |
皮膚疾患 | in vitro | 2020. Mar | 乾癬様皮膚炎の軽減 | 皮膚病変とSDLNの両方で炎症誘発性Th1細胞とTh17細胞の比を低下させる | 〇 |
肺疾患 | in vitro | 2021.Jul | 肺損傷に対する保護効果 | Nrf2シグナル伝達経路を刺激することで、炎症を抑制する | 〇 |
in vivo | 2020. Oc | 急性肺損傷の軽減 | NF-κB 経路を抑制し、炎症反応を減弱させた。 | 〇 | |
脳・精神疾患 | in vivo | 2024.Mar | うつ病治療の可能性 | TNF-α、NF-κb、IL-6、COX-2などの炎症マーカーも減少させた | 〇 |
in vivo | 2022. May | パーキンソニズムの改善 | IL-1β、NF-κB、および IκKB 発現の上方制御を有意に抑制した | 〇 | |
in vitro | 2019. Apr | 神経細胞の保護効果 | 炎症促進サイトカインIL-1βの発現を減少させた | 〇 | |
in vivo | 2017. Apr | 脳のアミロイド血管症における認知機能の改善 | PGE 2の含有量を有意に減少させた | 〇 | |
in vivo | 2006. Jan | 脳虚血再灌流障害の改善 | NF-κB活性化を調節する抗酸化作用に起因する | 〇 | |
糖尿病 | in vivo | 2023-Jun | 糖尿病マウスにおける創傷治癒のメカニズム | NF-κBシグナル伝達経路および関連する炎症誘発因子の活性化を阻害する | 〇 |
in vivo | 2019. Sep | 糖尿病網膜症の効果 | IL-1βおよびTNF-αのレベルが有意に低下 | 〇 | |
in vivo | 2018. Apr | 糖尿病性腎症の緩和 | NF-κBのレベルが低下 | 〇 | |
生殖器疾患 | in vitro | 2024.Jun | 抗酸化、抗炎症作用による妊娠の悪影響の防止効果 | 炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-6)のmRNA発現レベルを著しく阻害する | 〇 |
腎疾患 | in vivo | 2021. Jul | 酸化促進性および炎症性腎障害に対する保護効果 | IL-1β、TNF-αを減少させる | 〇 |
in vitro/in vivo | 2020. Apr | 腎線維化の保護 | Nrf2経路を活性化する | 〇 | |
心血管疾患 | in vivo | 2023.Sep | 心筋障害に対する保護効果 | NF-B、TNF-α、IL-1βの産生を阻害する | 〇 |
in vitro/in vivo | 2023.Apr | 腹部大動脈瘤の改善効果 | NF-κBを不活性化する | 〇 | |
in vivo | 2022.Jun | 心血管疾患に対する予防効果 | NF-κBのレベルが低い | 〇 | |
in vivo | 2021. Dec | 虚血・再灌流誘発酸化障害に対する効果 | TNF-αおよびIL-1βのレベルが有意に低い | 〇 | |
in vitro | 2020.May | 心血管損傷に対する保護効果 | NF-κB シグナル伝達経路の活性化を阻害する | 〇 | |
骨、関節疾患 | in vivo | 2023.Sep | 変形性関節症に対する治療メカニズム | NF-κB の活性化の減少、Nrf2 経路の活性化により炎症を抑制する | 〇 |
消化器疾患 | in vitro | 2022.Aug | 腸管バリア機能障害の改善 | TNF-α、IL-1β、および IL-6 を減少。NF-κBを抑制 | 〇 |
in vivo | 2022.Mar | 潰瘍性大腸炎の緩和作用 | TNF-α、IL-1β、およびIL-6の発現抑制 | 〇 | |
in vivo | 2021. Nov | 大腸炎の症状軽減 | 炎症誘発性サイトカインレベルが低下し、IL-10レベルが上昇した | 〇 | |
in vivo | 2021. Feb | 腸内細菌叢の調節作用 | NF-κBの活性化が著しく抑制されました | 〇 | |
その他 | in vitro | 2019. Jun | アレルギー性炎症反応に対する阻害効果 | Syk および下流の Akt/NF-κB と MAPK/cPLA 2経路を阻害しました | 〇 |
in vitro | 2017. Sep | アポトーシス(細胞死)の減少効果 | NF-κB活性化を介した細胞死を抑制する | 〇 |