タキシフォリンが発見されたのは1936年、ノーベル賞学者のアルベルト・サン=ジョルジ博士によるものだ、とされています。しかし厳密にいうとこれは正しいとは言えません。以前のブログ「ビタミンPについて」(https://sanoh-corp.jp/post-595/)でも触れていますが、サン=ジョルジ博士が発見したのはあくまでもビタミンPと呼ばれる一群のことです。博士はパプリカからビタミンCを取り出してきて、そのなかに、ビタミンC欠乏症を抑える物質を発見し、それをビタミンPと名付けました。

サン=ジョルジ博士は、ビタミンPを一つの物質と考えていたのですが、現在ではそうでないことが分かっています。ビタミンPとは、ヘスペリジンやケルセチン、タキシフォリン(ジヒドロケルセチン)、ルチン、カテキン、シアニジンなど、1000から6000もの成分からなる一群を総称する名称として使われています。

ですから正確に言えば、1936年にサン=ジョルジ博士が発見したのはビタミンPと呼ばれるグループであって、タキシフォリンという一つの成分を特定したわけではないのです。そしていまではそもそもビタミンPはビタミンなのか、ということも疑問視されており、日本ビタミン学会は「ビタミン様物質」としています。この「~様」というのは実態としては違うものではあるが、それが示す作用は似通っている、という意味です。なぜビタミンPがビタミンではなくあくまでもビタミン様物質なのかといえば、他のビタミンCなどのように欠乏症がないためです。

ですから、いまとなってはビタミンPと呼ぶよりフラボノイドと呼ぶほうがいいかもしれません。そしてフラボノイドはいくつかの種類に分けられます。

前回見たケルセチンは、フラボノイドのなかでも「フラボノール」という集団に属しています。フラボノールの骨格は、

(Wikipedia「フラボノール」)

のようになっており、ケルセチンは代表的なフラボノールと呼ばれていますが、その構造を見てみると納得できると思います。

(Wikipedia「ケルセチン」)

そして皆さんもよくご存じのカテキンはフラボノイドのなかでも「フラバン」という集団に属しており、

(Wikipedia「カテキン」)

というような構造をしています。なんとなくうえで見たケルセチン(フラボノール)とは違いますね。属している集団が違うからです。

 

そしてタキシフォリン(ジヒドロケルセチン)は、「フラバノノール」という集団に属しています。「フラボノール」と名前が似ていますが、下図のように構造もよく似ています。

(Wikipedia「フラバノノール」)

そしてこの構造を引き継いだ形が

(Wikipedia「タキシフォリン」)

となるわけです。